二本松の酒蔵のこだわり
安達太良山から花崗岩を通ってきた良質な湧水。馬蹄型の地形からか比較的雪が少ない風土。城下町として昔からまとまった量の米が集まっていたこと、酒の需要が多かったことなどが理由としてあります。
奥の松酒造株式会社
安達太良山の伏流水で自慢の酒を仕込む
1716年(享保元年)創業の奥の松酒造は、300年以上の歴史を誇る老舗蔵元。安達太良山麓の森の中に建つ酒蔵「八千代蔵」で日本酒を醸す。
仕込み水として使っているのは、もちろん安達太良山の清冽な伏流水。酒造りに必要なミネラル分をバランスよく含み、仕込み水に最適な名水。越後杜氏の伝統を受け継いだ蔵人たちの技と最新の設備によって造られる日本酒は、全国新酒鑑評会で11年連続金賞を受賞するなど、その味わいと実力を高く評価されている。
大七酒造株式会社
伝統の「生もと造り」で手間暇かけて醸す
大七酒造』の創業は1752(宝暦2)年。地元では“お城山”の名で親しまれている霞ヶ城公園からほど近い街中に建つ社屋は、まるでフランスのシャトーのような洋館でひときわ目を引く。
大七酒造といえば「生もと(きもと)造り」。生もと造りとは、江戸時代から続く日本酒の伝統的な醸造法。簡単に説明すると、蔵人たちが半切り桶で蒸米と麹を摺りつぶす「もと摺り(山卸)」の工程などを通して自然の微生物が生まれては消えていく環境を作り、乳酸菌の力で雑菌を淘汰。厳しい自然淘汰を生き抜いた力強い清酒酵母だけを育て、アルコールへと発酵させていく方法。現在の主流である「速醸酛(そくじょうもと)」に比べて時間も手間もかかり、職人の高度な技が必要となる生もと造り。
人気酒造株式会社
手造りの吟醸酒にこだわる新しい酒蔵
『人気酒造』は2007(平成19)年に設立された新しい酒蔵です。1897(明治30)年創業の大内酒造が前身で、長年酒造りに携わってきたプロ達が作った酒蔵。
歴史やしがらみに縛られず、本当に造りたい酒を造る。そんな想いを持った人たちが集まった人気酒造には、いろんなこだわりがある。まず日本酒は吟醸酒のみにこだわり、普通酒は造らない。そして機械に頼らず、手造り。伝統的な製法と道具にこだわり、安達太良山の伏流水と地元産酒米を使い、手間を惜しまず丁寧な酒造りをする。さらに日本酒の貯蔵は瓶貯蔵にこだわり、光や温度、空気による劣化を防いで品質を保っている。
銘柄は「人気一(にんきいいち)」。精米歩合60%以下で長期の低温発酵にこだわり、木製の道具を使い、和釜で蒸す、昔ながらの手仕事で造る吟醸酒は華やかな香りとフルーティーな味わいが特徴。
株式会社檜物屋酒造店
地元で愛される「千功成」の蔵元
自慢の銘柄は「千功成(せんこうなり)」。二本松藩主丹羽公の先の君主、豊臣秀吉の馬印“千成ひょうたん”にちなんで千成と名付けたのが始まりで、その後、千の功(いさお=手柄、勲功)が成るという意味から「千功成」となったそう。
二本松の他の蔵元さんの商品と異なり、千功成はほとんど地元で消費されるのが特徴。県外ではなかなかお目にかかれず、福島県を訪れなければ味わえない“地酒中の地酒”なのです。地元の人たちがこよなく愛する千功成は、安達太良山の恵みである良質な湧水と地元産の米を使用。昔ながらの甑(こしき)で米を蒸すことから始まり、ほとんどの工程を手作業で造っている。特にこだわっているのがもろみを搾り、酒と酒粕に分ける「上槽(じょうそう)」。搾り機を使用して圧搾する酒蔵が多い中、檜物屋酒造店ではもろみを布の袋に入れて槽(ふね)と呼ばれる枠に並べ、ゆっくりと上から圧力をかける昔ながらの方法でお酒を搾る。
